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サン=サーンス「クラリネット・ソナタ」のこと

モーツァルトやブラームスと同じく、サン=サーンスもクラリネット作品を晩年に書きました。しかも、オーボエ、ファゴット作品とともに! 彼が亡くなったのは1921年12月、この年の6月に完成したこの3曲はまさに彼の白鳥の歌なのです。

この曲を初めて知ったのは、高校2年のとき。オーケストラ部のOBでクラリネットの超名人O先輩が、私の学習用として、カセットテープに録音してくれた曲の1つでした。そしてこの曲、このCD(CALLIOPE / LES SONATES POUR INSTRUMENTS A VENT)は、今も私の愛聴盤の1つです。

ここには、大袈裟な絶望も無邪気な歓喜もありません。ただ人生の最後を予感するものだけが味わうであろう、諦観と微かな希望の間を揺れ動く柔らかな心情が綴られるかのようです。1楽章の一連のフレーズは、とくにそんな知ってはいけないような境地を知ってしまう思いです。

また3楽章は、息を呑まずには聴けません。2オクターブ下と上で同じフレーズが奏でられるこの楽章は、クラリネットの表現力の豊かさを思い知らされます。最もクラリネットらしいクラリオン音域の後半の緊張感と美しさは、ただならぬものがあります

サン=サーンスがこんなに美しい曲を遺して亡くなったことを知っている人は、そう多くはないと思います。鑑賞として木管のソナタを愛好する人は稀で、演奏者でないと、なかなかこの曲にはたどり着かないと思います

またこのディスクもそれほどメジャーではない、フランスのカリオペというレーベルのものです。このディスクを所有するのも奇跡に近いのかも知れません

人と人の出逢いも奇跡のようなものですが、人と音楽、また様々な作品との出逢いもまた奇跡のような偶然によるものだとつくづく思わされます。

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